「原価計算研究」 バックナンバー

2003年 Vol.27, No.1 (通算第53冊)

戦略的コスト・マネジメントの課題

小林啓孝
Summary
日本企業は米国経済の成長の大きな分け前を得ることはできなかった。また,日本企業の生産・販売の世界的シェアは落ち込み続けており,先進国市場でも,発展途上の市場でも敗退しかねない。日本企業は,アジア企業との競争で戦略面,コスト面で未曾有の危機に直面しており,これに対処するには抜本的な思考,仕組みの変革が必要である。
Key Words
①TQM ②世界の工場 ③生産シェア ④オートバイ ⑤戦略的コスト・マネジメント

ROQ(Return on Quality)と戦略的コストマネジメント

梶原武久
Summary
品質活動が財務的業績に結びつかないという問題が顕在化する中で,米国において,ROQ(Return on Quality)という考え方が注目されている。本論文では,ROQアプローチの特徴を明らかにした上で,ROQを改善するという観点から,戦略的コストマネジメントの役割やツールについて検討を行う。
Key Words
①ROQ(Return on Quality) ②TQM ③品質コスト ④非財務的業績指標 ⑤戦略的コストマネジメント

東芝のMI(Management Innovation)運動

本脇喜博
Summary
東芝は企業文化・風土の変革を目指し,1999年にシックスシグマ手法を取り入れたMIと呼ばれる経営変革運動を開始した。最初の3年間で多大な成果を得て,運動としてのMIは一旦終了し,2002年からはMIの常態化を目指すMI-Phase2を開始した。MIの手法はこれまでのシックスシグマに比べ手法的にも概念的にも進化したものとなっている。
Key Words
①経営変革 ②企業文化 ③シックスシグマ ④DMAIC手法 ⑤DFACE手法 ⑥VOC ⑦ベンチマーク ⑧COPQ ⑨プロジェクト ⑩経営品質

原価企画と原価改善のフィードフォワード構造

丸田起大
Summary
本稿は,原価企画と原価改善をめぐる理論と実践の検討を通じて,原価企画と原価改善におけるコントロールのロジックを説明するものとしてフィードフォワード概念に着目し,原価維持・原価改善・原価企画の展開をフィードバックからフィードフォワードへのコントロールの重点移行の現れとして位置づけるものである。
Key Words
①原価企画 ②原価改善 ③原価維持 ④フィードフォワード・コントロール ⑤フィードバック・コントロール ⑥管理会計フレームワーク

製品開発における環境マネジメントとコストマネジメントのリンケージ

朴 鏡杓
Summary
本稿は,製品の環境パフォーマンスとコストパフォーマンスを両立させるための統合された製品開発マネジメントについて考察するものである。具体的には,DfE(Design for Environment)と原価企画(Target Cost Management)を取り上げる。それぞれの限界と相互補完的関係について検討し,DfEと原価企画とを密接にリンクさせる新たな考え方やマネジメントアプローチを提示する。
Key Words
①DfE(Design for Environment) ②原価企画(Target Cost Management) ③ライフサイクルマネジメント ④環境管理会計 ⑤ライフサイクルコスト ⑥環境影響(Environmental Impact)

原価企画の海外移転に関する一考察 —移転の困難性を中心に—

ト 志強
Summary
これまでの研究では,原価企画の海外移転が様々な困難に直面しており,必ずしも順調に行なわれていないことが明らかにされている。しかし,それらの困難性の源泉およびその克服策については,十分に研究されているとは言い難い。そこで,本稿は,原価企画の海外移転の困難性に焦点を絞りながら,原価企画の海外移転に関する一つの分析枠組を構築することを試みる。
Key Words
①原価企画 ②海外移転 ③両立性 ④明示化可能性 ⑤システム依存性

原価企画へのコスト・ドライバー分析の活用
—Shank & Govindarajanの見解を中心として—

田坂 公
Summary
原価企画は,戦略的コスト・マメジメントとして位置づけられている。本論文では,原価企画と製品戦略の発想と結びつけて考察するために,Shank & Govindarajan(1993)のコスト・ドライバー分析を用いる。彼らが主張する構造的および実行的コスト・ドライバーを再構築して原価企画に活用すれば、原価低減効果を高めることが期待できるという仮説を示す。
Key Words
①原価企画 ②Shank & Govindarajan ③構造的コスト・ドライバー ④実行的コスト・ドライバー ⑤原価低減効果

原価企画におけるコストベンチマーキングの意義

大槻晴海
Summary
現代の競争環境において持続的競争優位を確立するためには,企業外部の状況を原価企画活動に継続的に反映させる必要がある。そのためには,コストベンチマーキングが不可欠である。本論文では,戦略的コストマネジメント・ツールとしての原価企画のレベル向上を目的として,原価企画におけるコストベンチマーキングの意義について述べる。
Key Words
①原価企画 ②コストベンチマーキング ③持続的競争優位 ④戦略的原価(改善)目標 ⑤戦略的コストマネジメント ⑥強み・弱み分析 ⑦目標原価の設定と細分割付 ⑧目標原価の達成

ライフサイクル・コスティングへの新たな取り組み
−日米発電技術のLC全コスト比較を中心に−

矢澤信雄
Summary
本論文では,ライフサイクル・コスティングの概念を社会原価まで拡張し,マネジメント理論におけるライフサイクル・コスティングの適用理論の構築を行った。また,実証面では,日米発電技術を対象にしてLC全コストの推計を行った。そして推計結果をもとに,日米LC全コストの比較分析を行った。
Key Words
①ライフサイクル・コスティング ②日米 ③発電技術 ④LCA ⑤LC全コスト

ライフサイクル・コスティングの体系に関する一考察
−独の製品ライフサイクルに依拠する原価計算を視野に入れて−

岡野憲治
Summary
独のライフサイクル原価計算(Lebenszykluskostenrechnung),製品ライフサイクル計算(Produktlebenszyklusrechnung),製品の開発・設計から廃棄までの利益管理をモジュ−ル的に説明するライフサイクル利益管理,ライフサイクル・コステイングと原価企画の統合を試みる製品ライフサイクル原価計算(Product Life Cycle Costing)とライフサイクル目標原価計算(Life CycleTarget Costing)などは,製品ライフサイクルに依拠する原価計算である。これら原価計算の特質が明らかにされ,ライフサイクル・コステイング体系との関連が考察される。
Key Words
①ライフサイクル・コステイング(Life Cycle Costing) ②製品ライフサイクル計算(Produktlebenszyklusrechnung) ③ライフサイクル原価計算(Lebenszykluskostenrechnung) ④製品ライフサイクル原価計算(Product Life Cycle Costing) ⑤ライフサイクル目標原価計算(Life Cycle Target Costing) ⑥ライフサイクル利益管理