「原価計算研究」 バックナンバー

2005年 Vol.29, No.1 (通算第57冊)

Resource−Based Viewによる資源配合プロセス

高橋邦丸
Summary
近年の戦略マネジメント論における主要テーマの1つであるResource−Based View(RBV)に関して、その基本的な前提条件や分析フレームワークについて言及するとともに、RBVに基づいた資源配分モデル策定に向けて、戦略の成否をいかに評価すべきかについて検討を加えている。
Key Words
①Resource−Based View(RBV) ②資源配分システム ③持続的競争優位 ④戦略の評価 ⑤経済的レント ⑥VRIO分析

日本流超予算モデル−トラストモデルの提言−

森沢 徹
Summary
日本企業の予算管理制度が破綻している。年度業績予想、財務予算、業績評価基準という三位一体の構造が実害をもたらしている。平均4ヶ月もかけて作成された年度予算は、年度初早々に形骸化する。既に現実味を失った予算でも、まずローリングはされないまま年度末の業績評価基準となる。そこには内向きかつ消耗的な「負のエネルギー」が渦巻き、年度末へ向けた「帳尻合わせ」活動は顧客や競争相手を向いた本来の価値創造活動を阻害する。この問題の解決には、資本市場⇔コーポレート⇔事業部門の3者間に「トラスト(信頼感)」を取り戻すことが第1歩である。
Key Words
①BBM ②超予算 ③脱予算 ④IR ⑤業績予想 ⑥ローリング ⑦業績評価 ⑧BSC ⑨バランス・スコアカード ⑩非財務 ⑪KPI ⑫トラスト ⑬BBRT

戦略志向組織における予算管理−BSCとの関係を軸とした検討−

伊藤 嘉博
Summary
本稿では、日本企業が戦略志向組織への脱皮を迫られているなか、予算ならびに予算管理の問題点を明らかにする。また、その現代的な意義を問い直すとともに、BSCと予算との有機的なリンケージのあり方を展望していく。
Key Words
①戦略志向組織(strategy-focused organization: SFO)②バランスト・スコアカード(balanced scorecard: BSC)③戦略型予算 ④BSCサーベイランス

新須磨病院整形外科におけるBSCの導入についての時系列分析−アクションリサーチとエンピリカルリサーチの統合アプローチ−

谷武幸・三矢裕・松尾貴巳
Summary
当初,業績測定方法の改善を目指して登場したバランスト・スコアカードだが,今日では,戦略マップやイニシアティブの有効性が認識され,戦略のマネジメントが重視されるようになってきている。本稿では,総合病院の整形外科でのBSC導入についてのデータを分析し,戦略のマネジメントの効果を実証した。
Key Words
①バランスト・スコアカード ②戦略のマネジメント ③導入効果,導入ステージ ④戦略マップ ⑤イニシアティブ ⑥医療機関 ⑦アーカイバルデータ ⑧時系列分析,アクションリサーチ

BSCと方針管理における役割期待とその関係
−戦略プロセスとの関連を中心に−

山田義照・伊藤和憲
Summary
本稿は, バランスト・スコアカード(BSC)と方針管理の関係を,戦略の策定と実行の観点から考察する。考察の結果,BSCは戦略実行のために戦略を現場へ落とし込む仕組みが必ずしも確立されていないことが明らかとなった。そこで,戦略的マネジメント・システムを機能させるために,方針展開によって戦略を現場に伝達する仕組みを持つ方針管理とBSCを補完的に連結することを提案している。
Key Words
①バランスト・スコアカード(BSC) ②方針管理 ③戦略的マネジメント ④戦略の策定と実行 ⑤ダブルループ学習 ⑥方針展開 ⑦戦略の落とし込み(カスケード) ⑧方策 ⑨イニシアティブ

わが国企業のバランス・スコアカード導入における促進・阻害要因に関する研究
−A社のケースを通じて−

乙政佐吉
Summary
 本稿では、バランス・スコアカード(BSC)の導入プロセスにおける促進・阻害要因の関係を析出することを目的として、事例研究を行っている。結論として、既存システムの運用方法が促進要因にも阻害要因にもなること、および、Kasurinen(2002)によって提示された会計システムの変化モデルでは広義のBSC導入プロセスを把握することが困難であることを得ている。
Key Words
①バランス・スコアカード(BSC)②方針管理 ③導入研究 ④広義の導入プロセス ⑤促進・阻害要因 ⑥会計システムの変化モデル ⑦事例研究

業績指標の操作と業績評価システムの変化

椎葉 淳
Summary
 業績指標に応じてどのように報酬が支払われるかが決まると,経営者は企業価値を高めることなく業績指標のみを高める行動をとるかもしれない。この論文では,そのような経営者による業績指標の操作に焦点を当て,どのような業績評価システムが望ましいかについて,エージェンシー理論を用いたモデル分析によって検討する。
Key Words
①業績指標の操作 ②企業価値 ③エージェンシー理論 ④情報の非対称性 ⑤株価連動の報酬契約

社内分社制導入の財務的パフォーマンスへの影響

加登 豊・安酸建二・島 吉伸
Summary
社内分社制を導入する目的あるいは期待される効果として、効果的な資源配分と配分された経営資源の効率的利用を通じて、企業全体の収益性の改善が指摘されている。しかしながら、社内分社制の導入によって、財務的パフォーマンスが改善されるかどうかについての実証的な証拠は、これまでのところ存在しない。そこで、本稿の目的は、この問題に対して実証的な証拠を提示することにある。
Key Words
①社内分社制 ②財務的パフォーマンス ③ROA ④ノンパラメトリック検定 ⑤イベント・スタディー

タイトル ミニ・プロフィットセンター制によるマネジメント・コントロールの分析
−結果・行動・人事・組織文化によるコントロールの視点から−

松木智子
Summary
本研究では、ある間接部門における単一ケーススタディを行い、ミニ・プロフィットセンター制のマネジメント・コントロール上の特徴を明らかにした。伝統的なプロフィットセンターが業績評価を目的とした「結果によるコントロール」としての特徴をもっているのにたいし、ミニ・プロフィットセンターでは、「人事的コントロール」「組織文化のコントロール」「行動のコントロール」としての特徴を持っていることが明らかになった。
Key Words
①ミニ・プロフィットセンター ②マネジメント・コントロール ③結果によるコントロール ④行動のコントロール ⑤人事的コントロール ⑥組織文化のコントロール ⑦会計情報の役割