「原価計算研究」 バックナンバー

2007年 Vol.31, No.2 (通算第62冊)

顧客関係性評価のための収益概念
−固定収益の提唱−

佐々木郁子・鈴木研一
Summary
価値観の多様化した現代社会において,企業が競争優位性を持続させるためには,顧客との取引関係性(顧客関係性)を維持することが求められている。本稿では,顧客関係性を会計情報として評価することを第一義的な目的として発案した固定収益概念,および固定収益概念にもとづく損益計算概念,顧客関係性評価の視点について論じる。
Key Words
①顧客関係性 ②固定収益 ③準固定収益 ④変動収益 ⑤固定営業利益

活動基準原価計算システムの構造

町田耕一
Summary
伝統的原価計算では間接費配賦計算が不正確であったことが問題となっていた。この評価の問題は活動基準原価計算の第1次的、第2次的発展により、解消したように思える。しかしながら、実際に総ての活動原価と原価対象を測定する問題は今日的課題である。今日の原価計算実践はコンピュータシステムを抜きにして考えられない。本稿はコンピュータ化を可能にする活動基準原価計算の計算構造と、この表裏にある情報システムの構造を開陳する。そして、システム統制との統合的構造を明らかにして、活動基準原価計算の利用目的を探求するものである。
Key Words
①活動マップ ②ドライバの評価 ③非付加価値活動 ④仕訳自動生成 ⑤原価対象の評価 ⑥活動の変動予算

製造間接費情報の活用動機づけのメカニズムに関する実証的研究

真部典久
Summary
本研究では,ABC/ABM研究の展開を踏まえて、わが国企業の製造部門管理者が製造間接費情報の活用を内発的に動機づけられるメカニズムを統計的に検証している。検証の結果,製造間接費測定システムの可視性・理解容易性が,製造部門管理者の自己決定感,有能感,他社受容感,強制感の認知を介して,内発的に動機づけられた製造間接費情報の活用を促進する,ということが明らかにされている。
Key Words
①製造間接費測定システム ②Activity-Based Costing ③製造間接費情報の活用動機づけ ④自己決定理論 ⑤基本的心理的欲求 ⑥内発的動機づけ ⑦共分散構造分析

銀行ABCの実態と課題

谷守正行
Summary
銀行業において伝統的原価計算の課題を解決する目的で適用されたABCが,実務的にみてどのように経営に適合したのかを検討する。現状では,ABCが銀行原価計算のデファクト・スタンダードと考えられるが,それは事務量分析データを利用した伝統的原価計算の延長でABCが適用されたからである。そのため,銀行ABCは事務やシステムなどの関連においてより適合性が高い状況にある。
Key Words
 ①ABC(Activity-Based Costing;活動基準原価計算) ②Time-driven ABC(時間主導型ABC) ③銀行原価計算 ④銀行管理会計 ⑤事務量分析 ⑥伝統的原価計算 ⑦業務の種類別原価計算 ⑧単位事務原価計算

設備老朽化が投資行動に与える影響
−償却累計率指標の有効性−

高見茂雄
Summary
設備投資額決定の実証研究の多くは,フリーキャッシュフロー,トービンのqなどの変数に焦点がおかれている。しかし,既存設備の老朽化が投資額に与える影響も重要と考える。そこで,われわれは日本の製造業897 社11年のデータを対象に,償却累計率を代理変数とし,その投資感応度を調べ,財務制約度や業種要因について考察する。
Key Words
①償却累計率 ②重回帰分析 ③クラスター ④財務制約度 ⑤業種要因

資格・検定試験の原価計算・管理会計教育への影響
−サーベイ・スタディ−

上埜 進
Summary
探索型の経験的研究である本研究は、郵便質問票(2005年に配付・回収)に対する回答をもとに、我が国の大学・大学院における原価計算・管理会計教育の現況を分析している。研究課題に、会計領域の資格・検定試験が、学部・大学院の原価計算・管理会計教育に及ぼす影響、ならびに管理会計論という学科目のフレームワークに及ぼす影響を取り上げた。
Key Words
 ①原価計算・管理会計教育 ②日商簿記検定試験 ③公認会計士試験 ④150時間の受講要件(The 150 semester credit hours requirement) ⑤会計大学院