「原価計算研究」 バックナンバー

2008年 Vol.32, No.1 (通算第64冊)

継続的改善活動におけるABCの適用
−因果関係分析に関連して−

片岡洋人
Summary
本稿では、まず原価計算における因果関係の考え方について整理し、伝統的な原価改善の方法を概観している。さらに、継続的改善活動を支援するための会計システムの不備や、トヨタにおける原価管理の進化について取り上げる。その上で、因果関係を追究した精緻で正確な原価計算システムによって継続的改善活動を支援できる旨を指摘し、それが重層的なミクロ・マクロ・ループを有するトータル・システムとして構築されるべき旨を指摘している。
Key Words
①因果関係 ②継続的改善活動 ③ABC ④資源の投入と利用 ⑤ミクロ・マクロ・ループ ⑥原価改善システム ⑦進化 ⑧トータル・システム

フリークエンシー・プログラムを利用した固定収益マネジメントの可能性

佐々木郁子
Summary
顧客獲得と収益獲得のビジネスモデルとしてカスタマー・インティマシーとCRMに着目し,顧客関係性を評価する仕組みとしての固定収益会計と,顧客関係性を構築し維持する仕組みとしてのロイヤルティ・マーケティング,実行手段としてのフリークエンシー・プログラムを取り上げ,固定収益マネジメントの可能性について検討する。
Key Words
①固定収益マネジメント ②固定収益会計 ③カスタマー・インティマシー ④CRM ⑤ロイヤルティ・マーケティング ⑥フリークエンシー・プログラム

関係性のマネジメント
−複雑性と成熟化の経営環境に適合する人材育成の企業競争力−

今井範行
Summary
社会・経済の複雑性と成熟化が高進する21世紀の経営環境下では,人間性の尊重を基盤とした組織的・継続的な人材育成能力が企業競争力の重要な要素となる。その要諦は,伝統的な要素還元思考のスキーマを超えて,従業員の自律性・相互関係性・問題解決能力の練磨を促進する「関係性のマネジメント」にある。
Key Words
①エピステモロジー ②複雑適応系 ③相互作用思考 ④真因見極め力 ⑤スキーマ ⑥階層性 ⑦自律的行動 ⑧相互関係性 ⑨トヨタウェイ ⑩人材育成

企業間管理会計設計における「貸し借り」の役割

木村彰吾
Summary
企業間管理会計における協働の利益の配分問題について、日本的な慣行である「貸し借り」に着目し、利益配分におけるコンフリクト解消の機能を分析する。それを受けて、貸し借りが長期的な企業間関係の構築と補完的であることを説明し、企業間管理会計設計における「貸し借り」の役割を明らかにする。
Key Words
①企業間管理会計 ②貸し借り ③協働 ④ゲスト・エンジニア ⑤原価企画

品質コスト測定の効果に関する実証研究
−サーベイデータに基づく分析−

梶原武久
Summary
本論文では、大量サンプルのサーベイデータを使用し、品質コストの測定がもたらす効果について共分散構造分析による分析を行った。分析においては、品質コストの網羅的な測定が、3つの効果を通じて、品質水準と財務業績の双方の向上に寄与することが明らかにされており、日本企業のもとでも、品質コストが有用であることを示す分析結果が得られた。
Key Words
①品質コスト ②品質管理コスト ③失敗コスト ④サーベイデータ ⑤共分散構造分析

品質・原価・開発期間をバランスさせる目標原価設定のしくみ

林 久嗣
Summary
本稿では原価企画が利益管理の手法であるだけでなく,品質・原価・開発期間 (QCD)をバランスさせる技術マネージメント手法としての役割も担うことを技術者の視点から考察する。とりわけ,外部環境から決まる許容原価と組織能力で決まる成行原価を擦り合わせる目標原価設定プロセスに焦点を当て、目標原価擦り合わせの意味と目標原価の果たす役割を明らかにする。
Key Words
①技術マネージメント ②原価企画 ③擦り合わせ見える化グラフ ④目標原価設定 ⑤QCD

手術領域における原価・価格関係の実証分析
−RCC法の妥当性と採算性の検証−

荒井 耕
Summary
医療界では、理論的には問題があるとされつつも、妥当性の程度が実証されることなく幅広くRCC法が利用されてきた。本研究では手術領域の現状の診療報酬制度下でのRCC法の妥当性の程度を検証した。また実証的な分析がないまま医療サービスの採算性が今日盛んに議論されている。本研究では手術の採算性を実証的に分析した。
Key Words
①手術 ②原価 ③価格 ④RCC法 ⑤採算性

サービス産業におけるイールド・マネジメントと顧客価値管理との関係

青木章通
Summary
本稿ではイールド・マネジメント、ロイヤルティ・マネジメントおよび顧客価値管理の関係を検討した。想定しているセグメントの軸が異なるため、3者を統合することは現状では困難であった。この問題は、実務においても認識されていた。本稿では、固定収益マネジメントの枠組みを利用して3者を統合することを提案した。
Key Words
①イールド・マネジメント ②レベニュー・マネジメント ③ロイヤルティ・マネジメント ④顧客価値管理 ⑤固定収益マネジメント

固定収益会計における差異分析
−顧客関係性差異分析のフレームワークと事例研究−

松岡孝介・鈴木研一
Summary
本稿では,固定収益会計における差異分析として顧客関係性差異分析のフレームワークを示し,ホテル業A社への適用事例にもとづいてその有効性を考察した。考察の結果,顧客関係性差異分析のフレームワークが,一般的な差異分析に比べて,より具体的なマーケティング意思決定につながる可能性をもつことが示唆された。
Key Words
①固定収益会計 ②顧客関係性 ③顧客関係性差異分析 ④顧客の量的変化 ⑤顧客の質的変化 ⑥製品選好の変化