「原価計算研究」 バックナンバー

2009年 Vol.33, No.1 (通算第65冊)

日本型環境管理会計の特徴と課題
−マテリアルフローコスト会計を中心に−

國部克彦
Summary
環境管理会計は欧米で手法の開発や実務が先行し、日本では2000年以降に発展してきた。環境管理会計手法の中でも、日本ではドイツで開発されたマテリアルフローコスト会計が発展し、2007年には日本から同手法をISOに国際標準化提案をするに至っている。本稿では、日本におけるマテリアルフローコスト会計を日本型環境管理会計として理解し、その特徴を発祥国ドイツと比較しながら検証する。その結果、日本のマテリアルフローコスト会計はドイツよりも簡易型であるがゆえに普及したことを示し、そのことに起因する今後の課題を指摘する。
Key Words
①環境管理会計 ②マテリアルフローコスト会計 ③環境経営 ④ISO ⑤資源生産性

トヨタ生産方式のコスト・マネジメントへのインプリケーション

木村彰吾
Summary
本稿は、「自働化」と「ジャスト・イン・タイム」を2本柱とするトヨタ生産方式(以下、TPS)のコスト・マネジメントへのインプリケーションを考察するものである。TPSでは経営資源の費消を削減することで原価を削減しようとするので、アウトカムとしての原価ではなく、現金支出と資金の拘束期間に関心が払われ、原価管理として設計から生産まで一貫した原単位管理が行われることを明らかにする。
Key Words
①トヨタ生産方式 ②資金の拘束期間 ③原単位管理 ④管財差

ビジネス・プロセス・マネジメント(BPM)と原価管理

李 健泳・小菅正伸・長坂悦敬
Summary
BPMとは,IT支援により組織横断の業務フローを「見える化」し,資源消費の視点に立って部門間でビジネス・プロセスに関する情報を共有・管理して業績管理につなげる方法論である。本稿では,BPMの枠組み,BPM構築ツールや内部統制での適用方法,BPMとTime-Driven ABCとの連携について論じる。
Key Words
①プロセスPDCA ②プロセス管理単位 ③ビジネス・プロセスの標準表記法とソフト ④内部統制制度でのプロセス統制 ⑤BPMとBSCの連携 ⑥Time-Driven ABC ⑦時間等式

トヨタ・パブリカ開発における原価企画

丸田起大
Summary
トヨタ自動車においては,官主導の国民車育成政策が目標販売価格の設定に影響を与え,航空機開発におけるチーフデザイナー制度が主査制度として導入され,航空機開発経験のある主査が航空機開発における重量計画のノウハウを原価管理へと応用したことによって,パブリカの開発時に原価企画という新たな管理会計技法が形成された。
Key Words
①原価企画 ②トヨタ・パブリカ ③国民車育成要綱案 ④長谷川龍雄 ⑤航空機開発技術 ⑥主査制度 ⑦重量企画

組織間協働と部品・資材の特性

坂口順也
Summary
本研究では、「調達する部品・資材のタイプごとに組織間協働や組織間関係、さらに、両者の関連性がどのように異なるのか」という問いに焦点を当てて、日本企業97社の質問票調査の回答結果を利用し組織間協働の現状について分析した。結果、部品・資材の特性に応じて特徴的な差異がいくつか明らかとなった。
Key Words
①組織間協働 ②組織間関係 ③部品・資材の特性 ④日本企業 ⑤質問票調査

わが国サービス原価管理論の展望

岡田幸彦・荒井 耕
Summary
近時のわが国サービス生産性向上運動に求められる“効率性と効果性の統合的管理”のためには,(1)効率性と効果性の関係性,(2)業務レベルでの定型化困難度,という2点を特に考慮する必要がある。今後はこれら2軸からなる新たな“ものの見方”を基礎としてサービス原価管理研究を蓄積し,その研究成果を社会に積極的にフィードバックしていくべきである。
Key Words
①サービス ②原価管理 ③原価企画 ④戦略的コスト・マネジメント ⑤効率性と効果性 ⑥定型化困難度 ⑦わが国サービス生産性向上運動 ⑧科学的・工学的アプローチ

売上高変動に対する経営者の適応行動
—原価データによる実証分析—

安酸建二・梶原武久
Summary
本研究では、公表財務データを用いて、実際売上高の変動および将来予測される売上高の変動がコスト変動に及ぼす影響について検証を行った。分析の結果、コストの下方硬直性がみられること、その程度は、売上高の減少幅が大きいほど強いこと、売上高予測がコスト変動に影響を及ぼすこと、大幅な売上高の減少予測に対して原価削減が加速化されることが明らかになった。
Key Words
①コスト・ビヘイビア ②コストの下方硬直性 ③売上高予測 ④コスト削減の加速化