「原価計算研究《 バックナンバー

2012年 Vol.36, No.2 (通算第72冊)

会計計算を通じた知識形成に関する研究
*日本電気化学におけるMFCA導入事例を通じて*

北田皓嗣・天王寺谷達将・岡田斎・國部克彦
Summary
本論文では日本電気化学におけるMFCA事例の分析を通じて,計算活動との関係で資源生産性に関するローカルな知識が形成されるプロセスを明らかにしている。資源生産性という抽象的な概念は,対象の測定やデータへの評価といった一連の計算活動を通じてローカルな知識へと翻訳され,組織実践を変化させた。これらの分析を通じて中小企業におけるMFCAへの実践的なインプリケーションを探っている。
Key Words
①MFCA(Material Flow Cost Accounting) ②知識の形成 ③翻訳の社会学(sociology of translation) ④翻訳 ⑤銘刻 ⑥中小企業 

MFCAによる改善活動と予算管理

中嶌道靖・木村麻子
Summary
本稿はマテリアルフローコスト会計(MFCA)におけるマテリアルロスの削減を実務において実行させるためには,マテリアルロス削減のアクションプランを策定し,PDCAマネジメントサイクルに組み込む必要性があるという問題意識から,企業の予算管理とMFCAとの連携による可能性と課題を検討した。
Key Words
①環境管理会計 ②マテリアルフローコスト会計(MFCA) ③予算管理 ④マテリアルロス削減 ⑤マネジメントシステム ⑥資源生産性

ライフサイクル・コストの生成とロジスティクス・コスト

中島洋行
Summary
ライフサイクル・コスティングは1960年代にアメリカ国防総省によって開発されたが,これは一朝一夕に生成したわけではなく,それ以前に行われた様々な研究,とりわけロジスティクス・コストに関する研究成果が結実したものである。本稿では当時の文献および資料に基づき,ライフサイクル・コスティングの生成から概念の確立に至るまでの一連の過程を明らかにする。
Key Words
①ライフサイクル・コスティング ②ライフサイクル・コスト ③ロジスティクス・コスト ④アメリカ国防総省 ⑤ランド研究所 ⑥ロジスティクス・マネジメント協会

ライフサイクル・コスティングの適用可能性
*映像コンテンツを事例に*

江頭幸代
Summary
本稿では,ライフサイクル・コスティングが,サービス産業にも適用できるのではないかと考え,近年,有望な産業として脚光を浴びている映像コンテンツを事例に検討する。本稿の目的は,アメリカのケースを参考に,どのようにライフサイクル・コスティングの思考を意識した回収計算が,映像コンテンツの意思決定に有用となるかについて研究することである。
Key Words
①ライフサイクル・コスティング ②回収計算 ③意思決定 ④映像コンテンツ ⑤製作委員会 ⑥ワンソース・マルチュース

内外製の意思決定における原価概念と企業間関係のマネジメント
*トヨタ自動車の事例*

木村彰吾・小沢浩
Summary
部品の内外製の意思決定に用いられる原価として,価値ベースの原価,発生ベースの原価,経済性コストがあり,それらの使い分けが行われているというトヨタ自動車の実務を説明する。そして,当該実務のインプリケーションとして,原価の使い分けという内外製の意思決定システムが企業間関係の構築に寄与することを明らかにする。
Key Words
①価値ベースの原価 ②発生ベースの原価 ③経済性コスト ④調達理念

工程シミュレーションによる生産コストのフィードフォワード・コントロール

長坂悦敬
Summary
生産コストは材料費のみならず労務費,経費に大きく依存し,組立・加工の生産性向上,部品在庫・製品在庫の極小化,工程内物流の最適化,省スペース化等による低減が望まれる。本研究では,工程シミュレーションを有効に活用し,生産コストのフィードフォワード・コントロールを実現する方法論について検討した。
Key Words
①シミュレーション ②フィードフォワード・コントロール ③ビジネス・プロセス・マネジメント ④生産コスト ⑤原価低減 ⑥MCS

有利子負債返済とセグメント間資金融通との関連
*大手化学メーカーの事例*

高見茂雄
Summary
大手化学メーカー114社11年度のパネルデータによる分析では,有利子負債残高と資金補填は促進的に,内部資本市場規模と資金吸上は抑制的に有利子負債返済額に働くことを検証した。加えて,内14社の中期経営計画遂行状況を調べたところ,財務制約度が高い企業と優良企業では,負債・投資政策に差異があることが明らかになった。
Key Words
①有利子負債返済 ②負債・投資政策 ③事業セグメント ④内部資本市場 ⑤財務制約度 ⑥中期経営計画 

企業再生計画の策定における現実的な将来願望への誘導
*地域金融機関と顧客の相互作用を通じて*

吉川晃史
Summary
本稿の目的では,企業再生計画がどのように地域金融機関と顧客に理解されているかの一端をエスノグラフィックな定性的研究により明らかにすることである。本稿では,地域金融機関との相互作用を通じて再生企業の経営者の将来願望がどのように現実化されるかを明らかにし,経営計画の策定を通じた経営者の意識改革に関する知見を提供する。
Key Words
①企業再生 ②経営計画 ③意識改革 ④将来願望 ⑤エスノグラフィー

ブランド・マネジメントにおける管理会計情報の役割の検討
*予算管理を中心に*

木村麻子
Summary
主としてマーケティング領域で論じられてきたブランド・マネジメントに対して,管理会計情報が果たす役割について検討する。とくに,ブランド・マネジメントのPDCAサイクルを支援するための予算管理に関する会計情報について論じる。
Key Words
①ブランド・マネジメント ②意思決定 ③予算管理 ④プロジェクト予算 ⑤広告費予算

医療法人における原価計算利用方法の実態
*影響機能の利用と焦点化*

荒井耕・尻無濱芳崇
Summary
いまや現場管理者も原価計算情報の主たる利用者となりはじめ,また分析的利用でなく働きかけ的利用も見られ,分析的利用よりも働きかけ的利用に焦点を当てた原価計算も一部の法人では見られるようになった。さらに,分権的法人や各種管理会計導入法人の方が,原価計算の両利用法とも利用度が高くなっている。
Key Words
①医療 ②病院 ③原価計算 ④管理会計 ⑤影響機能 ⑥権限委譲

公会計・行政評価情報の行政経営への活用に向けた課題
*混合研究法に基づく考察*

目時壮浩・妹尾剛好
Summary
わが国行政組織では,公会計・行政評価情報の整備が進みつつある。しかし,先行研究では,これらの情報を行政経営に活用することの効果が明らかにされていない。そこで本稿では,量的研究と質的研究を併用する混合研究により,公会計・行政評価情報の行政経営における活用の効果を明らかにするとともに,両情報のさらなる活用に向けた課題を検討する。
Key Words
①公会計情報 ②行政評価情報 ③行政組織 ④混合研究法(Mixed methods) ⑤マネジメント・コントロール・システム(MCS)

非営利組織へのBSC導入効果
*文献レビューに基づく考察*

尻無濱芳崇
Summary
本研究では,BSCの非営利組織への導入と効果の因果関係に注目し,量的研究のレビューを行った。レビューの結果,BSC導入が非営利組織内の個人の戦略意識・戦略理解に影響をあたえること,組織業績の向上をもたらすこと等がわかった。本研究で扱った研究は病院についての研究のみなので,結論を他のタイプの非営利組織へ一般化することはできない。
Key Words
①非営利組織 ②医療 ③バランスト・スコアカード(BSC) ④研究の妥当性

日本企業における管理会計実務の萌芽
*明治初期の郵便汽船三菱会社の事例*

カモシヴァ・ディルフーザ
Summary
本研究では,管理会計実務の萌芽期における,変化する背景(経営環境,戦略等)の中で経営システム(組織構造,会計制度,その他)の発展について,郵便汽船三菱会社の事例に基づき検討する。
Key Words
①経営環境 ②経営方針 ③経営システム ④組織構造 ⑤会計制度 ⑥複式簿記ン