「原価計算研究」 バックナンバー

2014年 Vol.38, No.1 (通算第75冊)

経済モデル,会計基準,原価計算理論から見た「原価計算基準」の問題点

櫻井通晴
Summary
本研究では,日本の「原価計算基準」の卓越した点を正当に評価するとともに,現時点から見て,経済モデル,会計基準,原価計算理論のどこに問題があるかを検討し,われわれは今後,「原価計算基準」にどう対応すべきかを提案する。結論として,「基準」は時代に遅れ,現代の会計基準・原価計算の理論にも適合できていないので,「基準」にとらわれない自由な立場から研究を進めることを提案する。
Key Words
①「原価計算基準」 ②会計基準 ③経済モデル ④IFRS ⑤企業会計基準 ⑥マネジメント・アプローチ ⑦経済のソフト化・サービス化 ⑧インタンジブルズ型経済

顧客価値ベースの人間尊重経営

伊藤武志
Summary
企業の組織成員は企業のステークホルダーであり,同時に商品・サービスという価値を創り提供しその責任を持つ人間である。この組織成員という人間を尊重する経営の実現手段として,先行研究と企業の実践をもとに,組織成員が顧客価値を実感しモチベーションを向上させる仕組みを設計する。
Key Words
①顧客価値 ②人間尊重 ③組織成員 ④マネジメントコントロール・システム ⑤マネジメントサイクル ⑥喜び ⑦実感 ⑧モチベーション ⑨当事者意識

製造・開発における戦略管理会計の展望

長坂悦敬
Summary
グローバル化や多様化が進む中で,日本の製造業は,頻繁に戦略の見直しを迫られ,意図した通りに進めていくことが困難になっている。これらを踏まえ,先行研究から製造・開発に関する戦略管理会計の意義・特徴について整理・考察し,企業アンケート調査の分析と企業訪問・ヒアリングによる実態調査を加え,戦略管理会計技法の活用について展望する。
Key Words
①製造業 ②戦略管理会計 ③創発戦略 ④マネジメント・コントロール ⑤管理会計技法

事業戦略に適合する資本予算プロセスの研究

清水信匡・大浦啓輔
Summary
本研究は,事業戦略と資本予算プロセス(設備投資マネジメント)との整合性が企業業績にどのように影響しているかを実証的に分析した。全体として,戦略とマネジメントの整合性が成果変数である財務業績に結びつくことが明らかになった。特に,防衛型と探索型に整合的な設備投資マネジメントを行うことがそれらの企業の業績向上に結びつくことが明らかになった。
Key Words
①資本予算 ②設備投資マネジメント ③整合性 ④事業戦略 ⑤戦略タイプ ⑥防衛型 ⑦探索型 ⑧実証研究 ⑨階層的重回帰分析

組織間協働とその影響要因
-サプライヤーの視点-

坂口順也
Summary
本研究では,サプライヤーの視点から組織間での情報共有,取引相手の特徴,取引の特徴が組織間協働に対して与える影響について検討したものである。検討の結果,情報共有が組織間協働の基礎となっていることや,取引相手への信頼が相互浸透を促進し,取引相手の能力が問題解決を促進していることが観察された。
Key Words
①相互浸透 ②問題解決 ③情報共有 ④取引相手の特徴 ⑤取引の特徴 ⑥サプライヤー

サプライチェーンへのMFCA活用の課題
-バイヤー企業とサプライヤー企業とのヒアリング調査を通じて-

中嶌道靖・木村麻子
Summary
本論文ではマテリアルフローコスト会計(MFCA)の導入によって見える化したマテリアルロスをバイヤーとサプライヤーとの協業によって,いかに削減することが可能かを論じる。2011年末から実施された事業会社(バイヤー企業)と同一加工業種4社(サプライヤー企業)とのMFCA情報による省資源化・コスト削減の検討会を継続的に調査した研究成果である。
Key Words
①サプライチェーン ②MFCA ③バイヤー・サプライヤー間 ④ヒアリング調査 ⑤イノベーション ⑥マテリアルロス削減

宿泊業における管理会計の実態調査
-ホテルおよび旅館における業績評価に注目して-

伊藤嘉博・小林啓孝・長谷川惠一・目時壮浩
Summary
わが国における宿泊業を対象とした管理会計,とりわけ業績評価とこれに影響を及ぼすと考えられる戦略との関係に注目し,質問票調査による実態調査の結果に基づく探索的な分析を行った。その結果,ホテルおよび旅館における業績評価の特徴,業績評価と戦略の関係性に関するいくつかの特徴が明らかになった。
Key Words
①宿泊業 ②ホテル ③旅館 ④質問票調査 ⑤業績評価 ⑥戦略

日本企業における海外子会社管理
-マネジメント・コントロール概念の検証-

西居豪・近藤隆史・中川優
Summary
本論文は,本社が海外子会社に対して行使するマネジメント・コントロールの概念モデルを提示し,その実証的妥当性を検証したものである。日本の海外進出企業578社620部門のデータを用いた分析の結果,理念コントロールと会計コントロールから構成されるモデルの実証的妥当性が支持された。
Key Words
①海外子会社管理 ②マネジメント・コントロール ③理念コントロール ④会計コントロール ⑤構成概念妥当性 ⑥因子不変性 ⑦多母集団同時分析

管理会計研究における非営利組織の特質に関する検討
-諸外国における医療組織を対象とした文献のレビューを踏まえて-

藤原靖也
Summary
わが国でも非営利組織を対象とした管理会計研究は進展しつつある一方,その際に考慮する必要があるとされる特質に関する枠組みは規範的であるのが現状である。本論文では,当該特質を実際の豊富な研究蓄積に基づき検討するため,代表的な非営利組織である医療組織を対象とした諸外国における諸研究を整理・分析したうえで議論している。
Key Words
①非営利組織 ②医療組織 ③システマティック・レビュー ④業績概念 ⑤制度変化 ⑥医療専門職

管理会計システムがトランザクティブ・メモリー・システムに与える影響
-文献レビューに基づく考察-

渡邊直人・妹尾剛好
Summary
近年,組織学習に関する研究では,トランザクティブ・メモリー・システム(TMS)という概念が注目されている。本稿の目的は,文献レビューに基づき,日本企業において管理会計システム(MAS)がTMSに与える影響を考察するため,新たな分析フレームワークを構築し,今後それを経験的に研究するための方針を示すことである。
Key Words
①トランザクティブ・メモリー・システム(TMS) ②管理会計システム(MAS) ③管理会計担当者 ④チームのタイプ ⑤タスクのタイプ ⑥知識の内容 ⑦フィールド研究