「原価計算研究」 バックナンバー

2014年 Vol.38, No.2 (通算第76冊)

マネジメントコントロール・システムのアーキテクチャに関する研究
-MUFGにおけるBSC導入経験に基づく考察-

南雲岳彦
Summary
本稿は,三菱UFJフィナンシャル・グループにおける約12年間に亘るBSC導入事例に基づき,BSCと隣接する様々なMCSとの統合や連動に関する課題について,事業システムやモジュラリティ等の研究を参考にしつつ,MCSパッケージ全体のアーキテクチャ・デザインの観点から検討したものである。
Key Words
①バランスト・スコアカード(BSC) ②マネジメントコントロール・システム(MCS) ③統制レバー ④アーキテクチャ ⑤事業システム ⑥モジュラリティ ⑦MCSパッケージ・キューブ ⑧マネジメントコントロール・エコシステム

組織変化におけるマネジメント・コントロールの役割
-新たな視点の提案-

新江孝・伊藤克容
Summary
本稿では,組織変化とマネジメント・コントロール・システムの関係について考察した。組織変化という経営問題の理解には,LVPモデルが有効である。LVPモデルによって事例を再整理した結果,マネジメント・コントロールは,資源配分・情報フローを明示的に変更するPlanningと組織成員の認知枠組みに影響を及ぼすLearningの2つの局面で機能することが示された。
Key Words
①組織変化(organizational change) ②マネジメント・コントロール・システム(management control system) ③LVPモデル ④組織文化(organizationl culture) ⑤構成的役割(constitutive role) ⑥コントロール・パッケージ(control package)

海外子会社の現地化とマネジメント・コントロール
-日系グローバル企業のケーススタディ-

松木智子・中川優・島吉伸・安酸建二
Summary
グローバルに事業を展開する日本企業2社のケーススタディを通じて,海外子会社のトップ・マネジメントの国籍の違いと日本本社から海外子会社へのマネジメント・コントロールの違いを分析する。結論として,海外子会社のトップの国籍にかかわらず,「文化によるコントロール」を重視する傾向があることを指摘する。
Key Words
①海外子会社 ②マネジメント・コントロール ④現地人トップ・マネジメント ⑤本国人派遣者 ⑥文化によるコントロール ⑦ケーススタディ

グローバル企業におけるテンションとコントロール・パッケージ
-3社の比較ケース-

窪田祐一・近藤隆史・伊藤正隆・西居豪・中川優
Summary
本研究は,海外にて事業を展開している日本企業3社を取り上げ,グローバル経営にみられるテンション(対立する要素の併存)について考察する。分析の結果から,どのようなテンションが実現されているのかを明らかにし,このテンションとマネジメント・コントロールの関係をパッケージの視点から議論する。
Key Words
①グローバル経営 ②マネジメント・コントロール ③テンション ④コントロール・パッケージ ⑤複数ケーススタディ

組織文化概念を用いた管理会計研究の現状と展望

木村太一
Summary
本稿では,組織文化概念を援用した管理会計研究を,それぞれの研究が依拠している組織文化観を軸に整理する。このことによって,組織文化概念を援用した管理会計研究の現状を確認し,将来の研究課題を導出する。
Key Words
①組織文化 ②制約としての組織文化 ③資源としての組織文化 ④マネジメント・コントロール・システム

チャネル販売組織のマネジメントコントロール
-Cash Conversion Cycleの導入経験から-

足立直樹
Summary
チャネル販売組織は,メーカーの資本負担増大の課題を有しており,キャッシュフロー経営推進を支援する会計指標として「Cash Conversion Cycle」を実際のチャネル販売組織に導入した。導入の経緯・経過,促進要因・阻害要因と導入後の成果を,オープンブックマネジメントとの共通点・相違点およびMCSの考え方をふまえて考察し,チャネル販売組織のキャッシュフロー経営を推進する会計指標としてCCCが有効ではないかとする仮説を発見した。
Key Words
①チャネル販売組織 ②キャッシュフロー経営推進 ③運転資金管理 ④「Cash Conversion Cycle」 ⑤オープンブックマネジメント ⑥Interactive Control Systems

顧客収益性の統計的分析
-管理会計研究へのマルチレベル分析の適用可能性-

新井康平・大浦啓輔・加登豊
Summary
本研究は,顧客収益性データの分析方法について,新しく適用可能な統計的な分析技法を提案するものである。近年のHLM(階層線形モデル)による分析技法の深化は,統計的に複数の要因が利益へ影響する大きさを分析するための方法論を確立した。本研究では,シミュレーションデータを用いて,顧客収益性データに基づいた統計的な分析技法の効果と限界を議論する。
Key Words
①顧客収益性 ②HLM(階層線形モデル) ③マルチレベル分析 ④規範的研究 ⑤シミュレーション

中小企業に適したビジネス・プロセス管理のフレームワークとソリューション

李健泳・長坂悦敬・松本浩之
Summary
コストダウンや業務改革のためにBusiness Process Managemnt(BPM)に関する関心は高まっているが,中小企業にとっては,その構築のための資金不足や人材不足などにより実行は難しい。本稿は,中小企業に適したビジネス・プロセスの管理方法とこれに整合性を持たせたITソリューションにより,制約のある中小企業の現状に合わせてプロセスを段階的に構築・管理していくBPMモデルを提示する。
Key Words
①Business Process Managemnt ②段階的プロセス管理 ③ITソリューション構築方法 ④ソフトウェアSCRUM ⑤イベント ⑥TD-ABC ⑦プロセス成熟度モデル(Capability Maturity Model: CMM)

プロセスコストモデルの展開
-品質コスト収集の一技法としての考察-

小杉雅俊
Summary
プロセスコストモデルは,品質コストの理論的なバックボーンとして機能するPAFアプローチの弱点について,異なる観点から品質コストを分類し,プロセスの視覚化を伴う形で具体的な品質改善活動を示し,克服しようと志向するものである。プロセスコストモデルの具体的な内容とその現実的効果について検討する。
Key Words
①品質コスト ②予防コスト ③評価コスト ④内部失敗コスト ⑤外部失敗コスト

資金の時間価値を考慮したJコスト論の検討

井岡大度
Summary
トヨタ生産方式におけるジャスト・イン・タイムの重要な側面としてリードタイム短縮があげられるが,その改善活動の効果を財務数値と結びつけものとして,田中正知氏により提唱された理論が「Jコスト論」である。本稿では,この「Jコスト論」が資金の時間価値の考慮について,その評価が単利計算によるものであることを計算構造の観点から明らかにし,その展開として,連続複利による複利計算を前提とし,リードタイム等の短縮による効果の分析のための評価方法について提案・検討するものである。
Key Words
①Jコスト論 ②Jコスト(資金投入量) ③JITの評価指標 ④資金の時間価値 ⑤連続複利

大学病院の原価計算システムの活用状況と今後の課題
-10大学病院のインタビューを通じて-

坂口博政
Summary
本研究では,大学病院の原価計算の活用状況について調査を行った。データ活用では,部門別損益分析はされているがアカウンタビリティーの点は不十分で,総合管理への展開は課題である。また,活用サポートでは,経常的な算出はされているが算出ステージに合わせた担当者任用は検討でき,企画部門による現場の自発的な経営改善への動機づけは途上段階であった。
Key Words
①医療 ②病院 ③大学病院 ④原価計算 ⑤データ活用

テキストマイニングによる管理会計研究とSCM研究の比較
-組織間管理会計への貢献に向けて-

原慎之介
Summary
管理会計研究,特に組織間管理会計の研究では,研究対象や論点についてサプライチェーンマネジメントの研究と類似性が見受けられるが,その焦点は様々である。本稿では,両研究分野におけるトピックスの抽出及び比較を通じて,サプライチェーンを対象とした管理会計の主要なテーマを明らかにすることを目的としている。その際,テキストマイニングを利用することで,客観的に多くの研究を扱うよう試みた。
Key Words
①組織間管理会計 ②サプライチェーンマネジメント ③テキストマイニング ④書誌学的研究 ⑤残差IDF