日本原価計算研究学会第25回全国大会       1999年10月1日・山口大学

報告要旨

 

リストラクチュアリングとその成果分析の一研究

濱田弘作(千葉商科大学)

齋藤幹朗(千葉短期大学)

経済学部C−202 14:45〜15:25

 

目  次

1 報告の意図

2 リストラクチュアリングの特徴

3 リストラクチュアリングの成果

4 リストラと人員削減

5 企業成果VS人件費・給与削減の効果

6 むすび

 

1.報告の意図

 バブル経済崩壊後の企業環境が、極めて厳しい状況にあったことは周知のとおりである。すなわち企業は、多方面からリストラクチュアリングの遂行を迫られて来たからである。換言すれば、経済変動・経済局面が下降、所謂長引く不況を呈する状況の下で企業実体の維持、存続を図るための経営成果もしくは企業利益を志向し、撓まざる努力を遂行してきたように考えるからである。このことは、企業実体がgoing concernとして存続するための必要条件であった。

 因に、1991年3月期を機に上場企業の経常利益が全産業(製造業、非製造業)のすべてにおいて、急減を示したからである。勿論、当初2、3年間はバブル期における含み資産によって企業成果は微減であったが、漸次、減少幅を増加させていったのである。このことは第1、2表から明白になる。

 

 第1表は平成10年9月における上場企業の経常利益増減率を示している。因に、この時期における主要企業の業績悪化を列挙すると次のようになる。

(1)神戸製鋼 前期比35%減の520億円と、金利負担や出向者の労務費負担金をまかないえない水準にある。

(2)日野自動車 1999年3月期、230億円の経常赤字

(3)秩父小野田セメント 輸出価格下落で利益はマイナス

(4)日立製作所 2,600億円の赤字、設備投資は当初予定の1,500億円から実施済みの700億円を除き原則凍結

(5)東芝 経常減益率、当初見込み25%が86%に拡大

(6)ソニー 連結決算で22%営業減益

(7)本田技研工業 1998年4−6月期決算で連結営業利益30%増

(8)マブチモータ 連結で経常利益、過去最高

 ともあれ9月中間期における製造業全17業種中、増加見込みは食品のみである。

 

 第2表は1999年3月期決算が1998年同期に比して、売上高9,240億円を示しデフレ圧力が日本経済全体に色濃い影を落とし、減収率はデータ集計を始めた1973年期以降最大を示している。

 これらは各企業のコストリダクションで補い得る経常利益12.6%減となっている。ゆえに企業は、本格的経営体質の改善に乗り出し、巨額の特別損失を計上し最終利益の減少率は53.7%まで拡大となる。

 ともあれ、これら売上高の大幅減は金融システム不安の広まりによる国内の個人消費の低迷が企業の設備投資意欲の後退にあった。

 因に、減収率の高い企業を列挙すると次のようになる。

T 減収率(製造業5.9%、非製造業11.0%)

(1)東京エレクトロン 減収率37%減

(2)王子製紙 売上高13%減

(3)三井物産 売上高20%減

U経常減益率(製造業19.3%)

 

 第3表はリストラ策で、総合商社業態から離脱方針を明示した兼松を除く8社の1999年3月期における単独決算の状況を示している。すなわちアジア経済の不況、リストラ経費負担等を起因に売上高、営業利益は全社比マイナスとなり、当期損益で伊藤忠商事とトーメンを除く6社が減益もしくは赤字決算となっている。

 これら商社のリストラ策に、各社が低採算や不採算取引からの撤退により、全社が10%超の大幅減収となった。

 利益面もアジア向け債権の引き当て、不動産などの資産や圧縮などリストラ費用が重荷となったことにある。

(1)住友商事 1999−2000年、関連会社精算投資先の持株売却予定で、製造損失700億円

(2)伊藤忠商事 土地売却損284億円、早期退職の加算金235億円、有価証券評価損246億円等の特別損失を、タイム・ワーナー社株式売却益で565億円補填したにもかかわらず特別損益全体で425億円の損益

(3)日商岩井 金融子会社の精算や不良金融資産整理、1,900億円の特別損失で542億円の特別損失

 

2〜6 省略(後日報告)