日本原価計算研究学会第25回全国大会       1999年10月1日・山口大学

報告要旨

 

組織スラックによる利益平準化行動

高橋邦丸(青山学院大学)

経済学部B−202 14:45〜15:25

 

T.概 要

 組織における余剰資源を表す組織スラックについての研究は、組織においてスラックがどのように利用されるかといった機能面に関するものがほとんどであった。しかしながら、組織スラックの利用に関連した組織行動は、それぞれの組織において獲得されるスラック量の大きさに依存するものと考えられるが、これまでこのスラック量の観点からの議論や実証があまりなされてこなかった。

 高橋[1999]では、これまで財務データを使って組織のスラックの測定を行った研究をレビューし、これらの研究で用いられたスラック測定尺度を因子分析した結果、組織のスラック量を表す因子を発見した。そしてこの因子の因子得点すなわちスラック量によって分析対象の企業を大小に分類し、平均の差の検定を行った結果、組織で獲得されるスラック量がスラックの利用や収益性に影響を及ぼすことが明らかとなった。

 ただし高橋[1999]では、これまで一般的とされてきた組織スラックの機能分類が適切なものであるかについての議論が不十分であった。また、組織スラックは、そもそも業績の良好な期間に超過資源を吸収し、業績が芳しくない期間にそれらの超過資源を利用することによって業績を平準化させるものと定義づけられている。しかし、このような業績の平準化がどのようにしてなされているのかやスラック量の多寡がそれらに関係しているのかなどについては明らかとされていない。

 そこでこの報告では、高橋[1999]で用いた自動車・自動車部品会社61社の財務データをもとに、まず組織スラックの機能を表す4因子をBourgeois[1981]の回復の容易さに基づく機能分類と比較・検討を行う。そして、組織スラックを使って業績の安定化がなされているかについて、組織のスラック量を表す因子、スラックの利用を表す因子、そして企業の収益性を示す財務指標をもとに分析を行っている。 分析の結果、組織スラックを利用して利益業績の平準化がなされていること、そして組織で獲得されるスラック量やスラックの種類によっても利益業績の平準化に異なる影響を及ぼすことが明らかとなった。

 

U.分析方法および結果の一部

 −図表省略−

 

スラック因子と利益率との分散比

・スラック量と利用可能性スラックを固定した場合の、スラックと利益との関係について

 −図省略−

 

【参考文献]

Bourgeois, L.J.,“On the Measurement of Organizational Slack”, Academy of Management Review, Vol.6, No.1, 1981.

高橋邦丸稿、「業績安定化要因としての組織スラックに関する実証研究」、『原価計算研究』、Vol.23, No.2, 1999。

 

(なお、詳細については報告当日レジュメを配布する予定です)